第六回 觀音赴會問原因 小圣施威降大圣

南海普陀落伽山の大慈大悲救苦救難霊感観世音菩薩は、西王母に招かれて一番弟子の恵岸行者(托塔李天王第二子・木叉)と偕に瑤池へやって来て、荒らされた会場の様子を見て何事かと問うと、斉天大聖の仕業だと云う。菩薩は弟子の恵岸に、最前線の李天王の元に行って様子を探って来る様申し付けたので、恵岸は李軍に合流。悟空に挑んだが、菩薩の第一弟子たる恵岸の法力を以ってしても敵わず、撤退して此の事を菩薩に報告した。

菩薩は、悟空を捕える事の出来る神将として、玉帝の甥の顕聖二郎真君を推挙。玉帝は早速大力鬼王を二郎真君の下へ派遣し、出動を求める聖旨を伝えさせた。

真君は喜んで出兵し、李天王らが布陣する花果山迄来ると、其処は斉天大聖を逃さぬ為、神々により天羅地網が敷かれていて、猫の子一匹侵入・脱出出来ない様になっているので、

「天羅地網の神将方に申上げる。是は玉帝より差遣わされ、妖怪猿を捕えに参った二郎顕聖真君と申す者。直ちに営門を御開き戴き、李天王に御意得たい」

と声を掛けた。

忽ち話が伝わって、李天王から招きいれられた真君は、是迄の戦況を説明される。真君は、

「各々方は是迄同様、天羅地網を解かず、但し非常線の頂上部のみ空けておいて戴き度い。身共が彼奴と立ち合う間、一切助勢は御無用。夫れに就き、李天王に一つ御願い致したき儀が御座る。御邊は照魔鏡を持って、彼奴が迯げ出さぬ様、空中にて周囲を照らし続けて戴き度い」

とて水簾洞の前へと向かい、大聖に闘いを挑む。

この後延々と変化合戦が続き、最終的に大聖は廟に化ける。併し、尻尾だけは隠せずに、已む無く旗竿にして廟の後ろに立てた。それを根拠に真君は「あの廟は猿の化けたものだ」と見抜く。

物語中で悟空は様々なものに化けるが、一度として尻尾を隠せずにバレたなぞという事は無い。今回だけ尻尾を隠せない設定にしたのは何故だろう。西遊記全編を複数の作者が書いているからか。

見抜かれてヤバイと思った大聖は、隠身の法を用いて囲みを逃げ出し、二郎真君の根拠地たる灌江へ向かい、真君に化けていたが、追い駆けて来た真君と鉢合わせして、またもや一戦に及ぶ。

一方、観音と太上老君は偕に戦況を上空から分析していたが、老君が上空から金剛琢(金剛套)なる金属製の輪を大聖の頭めがけて叩きつけたので、大聖は脳震盪の如き状態に陥った処を、真君の飼い犬にふくらはぎを噛まれて且つ引きずり倒された。其処へ卑怯にも真君はじめ他六名が寄ってたかって大聖を押さえつけにかかり、縄で縛めた上に琵琶骨(鎖骨)を剣で突き刺して変化を使えない様にして、ようやくひっ捕らえる事に成功。

四大天王や李天王達は、兵を収めて真君に、

「いや見事な御手柄に御座る」

と褒め称えると、真君は、

「あいや、是は天尊の御徳、神々の御威光の然らしむる処。拙者に何の手柄が御座ろう」

と謙遜。

当たり前だ。この場合の功労者は老君と犬だ

扨、とっ捕まった大聖は、玉帝の命で切り刻みの刑に処せられる事に


第七回 八卦爐中逃大圣 五行山下定心猿

大聖は天兵達に由って斬妖台に護送され、降妖柱に縛り付けられ、刀、斧、槍、剣で折檻されたが疵一つ付けられない。南斗星が火部の神々を督促して火で焼かせても、雷部の神々に命じて雷を打ち込ませても、大聖には掠り傷一つ付けられない。(前述の無敵状態)

已む無く太上老君が、八卦炉で丹を練るついでに大聖をも炉中へ入れて焼き殺す事にした。

八卦炉は其の名のとおり「八卦」であるから、内部が乾・坎・艮・震・巽・離・坤・兌の八方向に分かれている。大聖は炉中に抛り込まれると、すかさず巽(東南)に潜り込む。巽は「風」で、風は火を吹き消すからである。併し風は煙を巻き上げ、其の煙が目に入り、大聖は「火眼金睛」となった。

(炉に入れられる前に既に無敵状態だったのに加え、炉で鍛えられて更に頑強になり、更に火眼金睛の眼で後々妖怪の変化を見破る事になる)

炉に火が入れられてから四十九日が経過したので、炉の中から出来上がった丹を取り出そうという。が、炉を開けた途端に大聖は逃げ出してしまう。

太上老君を突き飛ばして仰向けにひっくり返す、如意棒を振り回して天宮を破壊する等の狼藉を働きながら霊霄殿迄来ると、今度は王霊官と一戦交え、更に雷部三十六将を相手に、三面六臂の姿となって荒れ狂う。

驚いた玉帝は遊奕霊官と翊聖真君を使いとして、釈迦に妖怪猿を退治してくれる様頼んだ。

ここで例の「手の掌から飛び出せるか」という賭けをやる訳だ。

手の掌から飛び出せなかった悟空は、其の儘掌を返されて天界から落とされ、其の上に金・木・水・火・土の五行の連山に変えた指を落とされた。

扨、天界では早速如来の法力を褒め称えての宴会がおっぱじまる。何かと理由を付けては宴会だ。然もテーブルの上にはまたしても「龍肝・鳳髄」が乗っかっている。

西王母は女仙に命じて歌を歌わせ、舞を舞わせる。苦行をして仙人になったはいいが、女だったのが災いして斯様な所に引っ張り出されて歌わされ、舞わされるとは。然も如来に見せる為に。

挙句に宴会に参加した神々や仙人達は酒を飲んで「酩酊」しているという。何しに仙人になったんだお前らは。

如来は酔っ払いながら袖の中を探って、「磁・嘛・呢・叭・粗・村」の六文字を書いた御札を取り出し、弟子の阿難尊者に命じて五行山の山頂に貼り付けさせた為、大聖は身動きが取れなくなった。


第八回 我佛造經傳极樂 觀音奉旨上長安

釈迦が玉帝の許を辞して雷音寺に戻ると三千諸仏、五百羅漢、八大金剛、四菩薩が「天宮を荒らしたのは何者で御座居ますか?」と訊ねるので、釈迦が事情を説明し、自分が悟空を閉じ込めた事を話すと、

「聞いて一同大喜び。口を極めて褒め称えます。次いで御礼を申し述べ(中略)打ち連れて無邪気に楽しみました。」

褒め称えんのはルールだろうか?単なるおべっかか?褒められてる時、釈迦はどんな顔をしているのだろう?「いいよ褒めなくて」くらいの事は言わんのだろうか?

そして礼を申し述べんのは本心からだろうか?「暴れ者を取り押さえてくれて=世の中の為に働いてくれて」有難いというのか?本心か?

更に、無邪気に遊んどる場合か。修行しろ、修行。

地球時間で五百年経った頃、釈迦が、

「私の所に宝盆(大皿)が一つ有るゆえ、それに珍しい花や変わった果物を盛って、そなた達と「盂蘭盆会」を楽しみたいと思うか如何であろう?」

と、暇に厭かせて碌でもない事を言い出す。

宴会が始まって宴もたけなわ、酔った勢いでか釈迦がまたぞろ、

「四大部州の中で南贍部州の人間は碌でもない。私の所に三蔵(三つの蔵にいっぱいの)真経がある。これを勧めれば善行に努めるであろう。」

と思い付きで発案する。

南贍部州の住人の誰かがそれを取りに来ねば意味が無い。その任務に適した誰かを探し、指名するのに、私の許から誰ぞ行かなくてはならないが、誰か行ってくれまいか?と釈迦が言うので、観音菩薩が名乗りを上げた。

斯くして観音菩薩は釈迦から金襴の袈裟一揃い、九環の錫杖を一本預かって、人探しの使いに出た。

 

途中流砂河迄来ると、川の中から妖魔が飛び出した。後の悟浄である。其の姿は、青い様な黒い様な顔色で裸足。体は骨と皮ばかり。眼は爛々と輝き、口は横に大きく裂け、剣の刃の様な歯を持ち、髪は真っ赤であるという。然も武器として宝杖を持っている。明らかに河童ではない。

観音に付き随っていた木叉恵岸行者は即座に応戦。妖魔と数十合渡り合ったが勝負が付かない。木叉というのは前述した通り、托塔李天王の第二子であり、観音の第一の弟子だ。神通広大である事疑い無い。それと遣り合うんだから悟浄も強い筈なのだが、のちに三蔵と取経の旅に出るや、普通の人間と変わらない位弱っちく描かれる

扨、自分の襲い掛かった相手が観音菩薩で有る事を知った妖魔は、叩頭して伏し拝み、

「私は実は妖魔では御座居ません。霊霄殿で玉帝の御車に侍っていた棬簾大将で御座居ます。蟠桃会の時、手元が狂って玻璃の杯を壊し、其の為玉帝から鞭打ち八百の御仕置を受け、下界に流されて斯様な姿に変えられたので御座居ます。其の上七日に一度剣が飛んで来て、私のわき腹を百回余も突き刺し、大変難儀を致して居ります。」

と述懐した。

酷い話ではないか。幾ら大切にしている杯を割ったからって、其処迄するのは人間でも「酷い人」と言われるだろう。徳の有る坊さんや道士や神父なら、先ず「よいよい。物は全て壊れるもの。気に致すな」くらいの事は言いそうである。それが況してや1550劫(200880000年)も修行した天下の玉帝が、そんな杯壊されたくらいで鞭打ち八百はするわ、化け物に姿を変えてしまうわ、それでも飽き足らず、七日に一度剣を飛ばして、ただ突き刺すのみならず百回も然も脇腹という弱いとこを反復して刺すというんだから、なんとけつの穴の小さい事だろう。大体、天界に置いてある杯なんだから、神通力か何かで壊れない様にしておけよ。神仙から貰った物が、どうやっても壊れない・・・といった昔話なんてありそうな話じゃないか。それとも何か?「壊れる様なヤワイ物だからこそ価値が有るのじゃ」として敢えてそういうのをコレクションしとくのか?そういう物欲は脱却しろよ。人間の坊さんだってそういう物欲は忌み嫌ったりするよ。

観音は、「ではそうならない様にしてやるから、西天取経の坊さんを護って旅をしなさい」というんで、沙悟浄という法名をつけてやり、其の場を立ち去った。

観音が猶も進むと、今度は野豚の化け物がまぐわで突っ掛かって来た。観音が馬鍬を遮ると、驚いた化け物はひれ伏して、

「私は化け物では御座居ません。元は天の川の天蓬元帥で御座居ます。酒に酔って月の嫦娥に戯れかかった為、玉帝から金槌打ち二千の御仕置を受け、下界に流され、誤って豚に胎投し、斯様な姿に生まれ変わったので御座居ます。」

原文は「只因帶酒戲弄」。「戯れ、弄ぶ」とはどの程度の事を言うのか不明だが、恐らく「言い寄った」程度であって「襲おうとした」訳ではなかろうと思われる。それが金槌打ち二千回の上追放とは、つくづくケツの穴の小さい事よ。

と云うんで、悟浄の時同様、猪悟能という法名をつけてやり、三蔵の到着に備えさせた。

観音が先を急ぐと、空中で一匹、泣き叫んでいる龍が居る。事情を訊けば、

「私は西海龍王・敖閏の倅で御座居ます。火事を起こし、御殿の珠を焼いた為、父王が私を不孝者として天宮に訴えたので、玉帝に空中に吊るされて三百叩きの刑に処せられ、更に間も無く死刑になります。何卒菩薩様、御助け下さいます様」

いい加減にした方が良い。他人が火事を出したんなら兎も角、息子ですよ。然も「火事を出したから訴えた」んではなく、火事で「御殿の珠を焼いた」からだという。何というシワイ親父だろう。更に、我が手で息子を打擲するならまだしも、玉帝に訴え出て有罪にして殺してしまおうという。息子の命と「御殿の珠」、どっちが大切なんだ?

夫れを聞くと観音は助命嘆願する交換条件として、三蔵の馬になれと龍に吩い付け、龍がその条件を呑むと早速観音は玉帝に謁見し、助命嘆願してそれを認められる。

龍は釈放され、観音は其の場を去った。

道すがら、観音は悟空の閉じ込められている五行山を通り掛る。

観音の姿を見止めた悟空は、どうか助けてくれと懇願する。観音は、「三蔵の弟子となるならよかろう」と約束。其の場を去り、今回の作戦の目的地である唐の長安入りを果たす。


第九回 袁守誠妙算無私曲 老龍王拙計犯天條

唐の都のどっかの川っ淵で猟師と樵が立ち話。何でも、長安に当たると評判の易者が居り、其の易者の卦に随って魚を釣ると百発百中に釣れるという。

それを川の中で聞いていた、水中見回りの夜叉が、すわ一大事と、川を治める龍王に注進に及んだ。其の占いを当たるが儘にさせておくと、川の水族が獲り尽くされてしまう。という訳である。

龍王大いに怒り、書生に化けて其の易者の元を訪れ、「天気を占って貰い度い」と言った。すると易者、

「明日辰の刻に雲が拡がり、巳の刻に雷が鳴り、午の刻に雨が降り、未の刻に歇みます。雨の量は三尺三寸と四十八滴」

という。

龍王は、「それが当たらなかったら売卜をやめさせるぞ」と脅して川へ帰り、大小の水神に事の顛末を告げた。

水神達は、

「龍王様は八河の都総督で、雨を司る大龍神。それを前にしてあの易者、よくも左様な出鱈目が言えたもの」

と嗤っていた処、突如空中から、

「河の龍王、聖旨を受け取られい」

と、金衣の力士が手に玉帝の聖旨を捧げてやって来た。

聖旨を受け取って中を見ると、何と易者の言った通りの時刻・分量で雨を降らせよとの命令。

驚いた龍王。併し玉帝の命令に随って雨を降らせれば、あの易者の占いが当たった事になってしまう。そこで、龍王は聖旨と若干時間と分量を変えて雨を降らせる事にした。

翌日、かねての作戦通りに雨を降らせ、易者の所へ直行し、「当たらナンではないか」と詰め寄った。すると易者、

「私の方はどうでも良いが、玉帝の命に従わなんだおぬし、死罪は免れまい」

という。どうやら龍王の正体を喝破していた様だ。

龍王慌てて助命を請うと、易者は、

「おぬしは明日午の三刻に、朝廷の役人、魏徴に斬られる事になって居る。唐の太宗皇帝の許に出向き、魏徴を押さえて下さる様願い出よ。皇帝の御情が得らるれば、無事安泰で居られよう」

という。

龍王は唐の皇帝の夢枕に立ち、

「お宅の魏徴さんが明日身共を斬ろう肚積りの由。何卒阻止下されたい」

と申し出ると、皇帝は了承した。

皇帝は次の日、魏徴を招いて碁を囲み、龍王を斬りに行くいとまを与えぬ様画策するが、さて、どうなりますか。それはお次の回で。
因みにこの皇帝と云うのが、映画「少林寺」で少林寺の僧達の協力で皇帝となった事になっている李世民である。こう云う事情も有ってか、西遊記ではわざわざ大乗仏教の経典を求めさせる為に玄奘を天竺に派遣する様な人物として描かれる。


第十回 二將軍宮門鎮鬼 唐太宗地府還魂

皇帝と魏徴が碁を囲んでいると、午の三刻になって魏徴が居眠りを始めた。皇帝は、忙しい身だからと、笑ってほっといた。

暫くして目を覚ました魏徴は、皇帝の御前で居眠りをかますとは不覚の至りと平謝り。皇帝も「いいよいいよ」なんつってる裡に、外から家臣が大騒ぎして龍の生首を持って来た。

「なんだこりゃ!?」

と問うと、雲の端から落ちてきたのだという。

更に魏徴が、自分が今夢の中で斬ったものだと言い出す。

不安に駆られる皇帝。案の定、深夜になると、皇帝の夢の中に龍王が出て来て、「儂の首を返せ!」と喚く。夫れが一週間も続くと、皇帝の体が参って来る。

見兼ねた臣下の護国公が、

「某と尉遅公とで御門の外を御守り致し、如何様なる化け物が推参致すか見届けてくれます程に」

といって、其の晩から重装備で警護を始めた。これがのちに門神のデザインの一つとなる。

こうして表門は護国と尉遅が護り、裏門は魏徴が護る事によって、化け物は出なくなったが、何しろ皇帝の具合が良くならず、そろそろ死にそうになってきた。

魏徴が言うには、

「拙者は冥府に見知り居る者が居り、其の者にこの書状を渡されれば必ず生き返れる事必定に御座りまする。其の者は()(ごく)判官・崔矮(さいかく)と申しまする」

皇帝は書状を受け取ると身罷った。

あの世へ着いた皇帝を出迎えたのが崔矮で、「皇帝は龍王に赦免を与えたにも拘わらず断罪に処した件」に就いての審議が有るのだという。

「ま、兎に角」と、魏徴から渡された書状を渡すと、崔矮は生き返らせる事を約束してくれた。

十大閻王がやって来て、真理を済ませると、無事皇帝の容疑が晴れる。

其の上、生死簿上の皇帝の寿命を崔矮が書き換えたので、まだ寿命が残っているとして、皇帝は地獄見物をし乍ら生き返る事に成る。
現世への帰り道、亡者達が皇帝に絡んで来たので困っていると、崔矮が、
「亡者達は供養されていないから餓鬼になっている。金を恵んでやるのであれば私が御助け出来ようかと存知まする」
という。中国では供養するのに紙銭と云う物を焼いて、金を向こうの世界に送った事にする風習がある。
皇帝が、地獄に財布なんぞ持って来てる訳ねえじゃねえかと言うと、崔矮が、
「実は現世の河南開封府の相良と申す者が日頃紙銭を焼いて、こちらに蔵を十三持つ程になって居りまする。この者から身共を証人と致し、蔵一つ分借り入れ、其の金を渡してやれば、亡者共も退き下がりましょう」
と言うので、そんじゃそれでいいやってんで証文を書いて金を借り、亡者に渡して其の場を何とか逃れた。
続きはお次の回で。


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